記録005(2023年7月27日)S
記録005(2023年7月27日)S
引き続き暑い世の中。
今回も差別表現満載なのでご注意してください。
トランス排除派研究者による話題のツイート
トランス排除派の動きが盛り上がってからは頻繁にトランス排除派として活動してきた研究者の一人である牟田和恵(むた・かずえ)が2023年7月26日に次のようなツイートをした。
https://twitter.com/peureka/status/1684167071201112064?s=20
純粋にアカデミックな疑問なんですが、トランスジェンダーを広く定義(あるいは定義することが差別だと)しておられる高井 能川小宮先生はじめの先生方は、今回の札幌の事件についてどう考えておられるんでしょうか?
— 牟田和恵 (@peureka) 2023年7月26日
被害者は犯罪目的のただの女装者でトランスではないと片付けていいんでしょうか?
純粋にアカデミックな疑問なんですが、トランスジェンダーを広く定義(あるいは定義することが差別だと)しておられる高井 能川小宮先生はじめの先生方は、今回の札幌の事件についてどう考えておられるんでしょうか?
被害者は犯罪目的のただの女装者でトランスではないと片付けていいんでしょうか?— 牟田和恵 (@peureka) 2023年7月26日
これまでの牟田(むた)
そもそも牟田和恵(むた・かずえ)は社会運動についての研究者であるが、WANという団体がトランス排除派をけん制したときには、2023年7月26日には次のような文章を書いている。
https://note.com/mutakazue/n/n38c390f8d59c
声明では、「女性の安全がトランスジェンダーの権利擁護によって脅かされるかのような言説」が「フェミニストのあいだにも」あるとし、そのことがトランスジェンダーへの憎悪をかき立てているとあります。このように、女性の安全を求めることをトランス差別・トランスヘイトとみなす立場、トランスジェンダー問題と女性の安全は一切関係がないとする立場は、同声明だけでなく、トランスの権利を擁護する方々の中でしばしばみられますが、この認識には、いくつもの意味で問題があり、女性の権利を脅かしかねないものです。
女性の安全を求めるフェミニスト・女性たちのほとんどは、MtFトランス(トランス女性)の方々の存在が女性の安全を直接に侵害する、などという乱暴な議論はしておりません。かりにそうであるとすれば、それはたしかにトランス差別、トランスヘイトとみなされるのも理解できますが、しかし、そうではなく以下のような観点からトランスジェンダー問題と女性の安全について懸念し問題提起しているのです。
特徴的なのは、「女性」という言葉でもって「シス女性」のことを指していることである。つまり、「女性の安全」と書いているときに想定しているのは、「シス女性の安全」であるということである。
「女性の安全を求めることをトランス差別・トランスヘイトとみなす立場、トランスジェンダー問題と女性の安全は一切関係がないとする立場」と書いてあるが、「女性の安全がトランスジェンダーの権利擁護によって脅かされるかのような言説」以外の仕方ですべての女性の安全を求めることを批判しているのではなくて、トランスジェンダーの権利擁護によって安全が脅かされるような話し方を問題にしている。それに、「トランスジェンダー問題」とは何であるかは批判的に検討すべきであり、女性への差別を「女性問題」と書くことが問題であるのと同様に「トランスジェンダー問題」という表記は被害者を問題の主体と見なしている点で悪い。ここで紹介しておくべきは、ショーン・フェイ『トランスジェンダー問題』だろう。最初の引用における「高井」とはこの本を訳した高井ゆと里(たかい・ゆとり)のことであろう。
さらに、「トランスジェンダー問題」とは何かということを脇においても、「トランスジェンダー問題と女性の安全は一切関係がない」とは言っていないように思う。何らかの形でトランスジェンダーの権利擁護とすべての女性の安全は関係しており、つまり、トランスジェンダーの権利擁護を通じてトランス女性の安全は確保され、共有スペースという暴力の温床の個別化によりすべての女性の安全も考慮した改革が行われるだろう。
また、「女性の安全を求めるフェミニスト・女性たちのほとんどは、MtFトランス(トランス女性)の方々の存在が女性の安全を直接に侵害する、などという乱暴な議論はしておりません。」とのべているが、実際のところ本当に「ほとんど」と言えるかどうかは調査の余地がある。
ここでいう声明は次のサイトの2023年6月14日の声明を参照のこと。
【賛同受付は7月末まで】LGBTQ+への差別・憎悪に抗議するフェミニストからの緊急声明
2023.06.14 Wed
LGBT理解増進法案として、自民党・公明党案、立憲民主党・共産党・社民党案(=旧超党派議連案)、維新・国民民主党案の3本が提出され、自民党・公明党が維新・国民民主党案を取り込んだ4党修正法案が6月9日に衆議院内閣委員会、13日に衆議院本会議で可決されました。
4党修正法案に「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意」という文言が入ったことで、マイノリティの権利保障に向けたはずの法律がマジョリティの権利尊重を謳うことになってしまっています。学校における教育・啓発・相談体制の整備についても、「家庭及び地域住民その他の関係者の協力」を得るという条件が付記されたことで、性的マイノリティへの理解増進が抑制的に運用される懸念があります。
以前よりSNSを中心に不安を煽るような言説が広がっていましたが、LGBT理解増進法の成立が迫るなか、事態は一層深刻になっています。例えば、LGBT理解増進法ができると「身体的には男性の人が『心は女性』と言えば女性風呂に入れるようになる、それを拒めば差別だとされるので拒否できない」などという発言が頻出しています。このような事実誤認や偏見が広がることで、 モラルパニックが起き、その結果、トランスジェンダーへの憎悪がますます強まっていることを懸念します。
女性の安全がトランスジェンダーの権利擁護によって脅かされるかのような言説は、トランスジェンダーの生命や健康にとって極めて危険なものになりかねません。実際にトランスジェンダー当事者への殺害予告が寄せられる事態にまで発展しています。また、性別違和を抱える子どもたちに居場所を提供する活動に困難が生じています。
わたしたちはフェミニストとして、女性の不安を煽る言説が拡散している状況を深く憂慮し、フェミニストのあいだでもそのような動きがあることを懸念します。女性の安全と権利を求めてきたフェミニズムは、シス女性だけの安全を求めるものではありません。言うまでもなく、トイレや公衆浴場はだれにとっても安全であるべきです。女性の安全が十分に守られていない現状が問題であり、性暴力被害者への支援や性暴力を防ぐための法整備が強く求められます。
この声明は、4党修正法案が成立しかねない緊迫した状況のなか、LGBTQ+への攻撃が止むことを願い発出するものです。ジェンダーに基づく差別のない包摂的な社会の実現に向け、フェミニストとしてトランスジェンダーへの差別、偏見、憎悪をなくす動きに連帯し、今後いっそうの対話の機会を設けていきたいと願っています。
呼びかけ人(五十音順、2023.6.13.時点)
浅倉むつ子、荒木菜穂、池田啓子、伊田久美子、井田奈穂、上野千鶴子、長志珠絵、太田啓子、大森順子、岡野八代、 河野和代、北仲千里、清末愛砂、杉田真衣、内藤忍、中谷文美、中野麻美、東優子、福田和子、古久保さくら、三浦まり、三成美保
それで、牟田(むた・かずえ)はどのような理由からトランスジェンダーの権利擁護が(シス)女性の安全を脅かすと考えるかというと、三つの理由をあげている(番号は4まであるが、4つめは「WANサイトへの期待」である)。
1) 「トランスジェンダーへの配慮」のもとに安全のハードルが下がっている
トイレや公衆浴場、更衣室などが基本的に男女別に分かれるのを当然としていたこれまでも、女性や子どもは安全を脅かされてきました。商業施設の女性用トイレ個室に潜んでいた男に女児が性的被害を受けた上に殺害されるというきわめて痛ましい事件から現在も頻繁に起こっている盗撮・のぞきまで、女性は性被害にさらされてきています。これらは、男性加害者によるものであり、トランス女性とは何ら関係ありません。
しかしながら、現在、ダイバーシティへの配慮を理由として、公共スペースにおいて女性トイレをなくしてオールジェンダートイレにするという事態が生じています。これでは、性加害者に犯罪の機会をみすみす提供するようなものです。これはあくまで、女性の安全をおざなりにして安易な改造を行う自治体や企業などの責任であり、トランスジェンダーの方々には何の責任もありません。しかし、ダイバーシティへの配慮という名目で女性の安全がさらに脅かされていきつつあるということは事実です。トランスの権利擁護、ダイバーシティへの配慮は、女性の安全の確保と同時並行で進められなければならないのではないでしょうか。
前半部の、男女分けスペースでは安全が保たれていないという説明は同意できる。特にすべての女性や性別関係なく子供の安全が担保できていない。したがって、性差別や年齢に基づく差別を無くしていこう、となってほしいところである。
自分はオールジェンダートイレで置き換えるのではなく増設するべきであると主張したい。さて、「女性トイレをなくしてオールジェンダートイレにする」はそもそもトランスの権利擁護ではなく、トランスの権利侵害の流れであろう。現状のトランスにとって比較的重要なことは自分の性別にあったトイレを使用できること、できないような状態ならオールジェンダートイレがあることであって、女性トイレをなくしてオールジェンダートイレになってしまえば、パスしているトランス男性はアウティングの心配で使いにくく、パスしているトランス女性は別に承認をされるわけでもなく、性別化されたトイレを使えないXジェンダーなどは「このトイレ実質女性用だから」と思って使えない。リードされるトランス男性は別に承認をえられず、リードされるトランス女性も周りの目を気にして使いにくいだろう。結局、トランスへの権利侵害をトランスの権利擁護と勘違いしているところを責めるべきであって、トランスの権利擁護とシス女性の安全の対立と見なすべきではない。
オールジェンダートイレになることで「性加害者に犯罪の機会をみすみす提供する」かどうかは、設計の問題だと思われる。トイレが見通しの悪い空間になっていれば性加害者が犯罪しやすい空間になっているが、見通しがよく逃げ道が確保できていればその限りではない。そして心配しているような事態になっているなら、オールジェンダートイレを使う人々全員が被害を被っているのだから、そもそもトランスの権利擁護になっていない。つまり、トランスの権利擁護がすべての女性の安全につながらないという話ではなく、トランスの権利侵害がすべての女性の安全につながらないという事態としてとらえるべきである。
二つ目の理由は次のように述べられる。
2)女性スペースが脅かされている現実がある
同声明では、「身体的には男性の人が『心は女性』と言えば女性風呂に入れるようになる、それを拒めば差別だとされるので拒否できない」という事実誤認や偏見が広がってトランス憎悪を強めているとあります。
しかし現実に、トランス女性の方々で、性別適合手術を受けていない(以下、未オペと略)状態であるにもかかわらず、女風呂に入った体験を喜々と語り、またそうした行為を勧めているような発信・発言がネット上では見られます。「女性の安全とトランスの権利は無関係」と述べる学者や弁護士、政治家には、そうした行動をいさめるどころか、トランス女性は未オペであれ女風呂や女性スペースに入ってよい、それに抵抗があるとすれば、女性の意識が遅れている(つまりはトランス差別意識がある)からだと述べておられる方もあります。
とくに公衆浴場については、LGBT理解増進法が公布施行されたのと同日6月23日付で厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課長名で「公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取り扱いについて」と題し「体は男性、心は女性の者が女湯に入らないようにする必要がある」とする通知が発せられました。増進法と同時にこの通知が出されたのには、女性の安全を求める人々の力が大きかったに違いありませんが、逆に言えば通知が出される以前には、「体は男性・心は女性の者」が女湯に入ることが起こりうるとの懸念には十分理由があったということです。同声明は、この通知以前の14日付で出されていますが、何をもって、身体的には男性でも心が女性と言えば女風呂に入れるなどあり得ない、差別意識に基づくデマだと断言しておられたのでしょうか。
公衆浴場の問題は女性の安全にとって一面にすぎません。大学や公的ポストの女性限定枠へのトランス女性の参入はすでに起きていますし、女性スポーツへのトランス女性の参入も「トランスの権利擁護」の進んだ諸外国では起こっていることです。例を挙げればきりがありませんが、これらもやはり、トランスの権利擁護と女性の安全や権利が衝突葛藤していることの証左です。今後は、女性差別是正のために採られるに至った措置や政策・制度の成立の背景を十分考慮しつつ、トランスの権利と女性の権利とを調和させていく方策を取っていくことが求められているのであって、「トランスの権利擁護と女性の権利は関係ない」かのように放置するのは、誠実とは言えないのではないでしょうか。
まず、意識が「遅れている」という表現を差別に対する形容として使うことはひどく差別的なので問題であるという点は抑えておく。これは牟田(むた)がそのように運用しているという話ではない。
ここで、女性の安全の話から女性の権利の話に移行していることに注意が必要である。
「トランスの権利擁護と女性の権利は関係ない」とカギカッコをつけているが、これは上で指摘したとおり牟田(むた)の誤読(権利擁護と安全の関係)からの置き換え(安全を権利に変えている)であって、関係ないとは言っていない。また、ここで「大学や公的ポストの女性限定枠へのトランス女性の参入」が「トランスの権利擁護と女性の安全や権利が衝突葛藤している」例として挙げられているが、ここで「女性の安全や権利」が「シス」女性の権利しか意味していないのは特徴的である。
また、トイレ、公衆浴場、大学や公的ポストの女性枠が連続的に語られるのは、とてもトランス排除的な文章の典型で、恐ろしくなる。この流れで差別的な話を何回も聞かされた。
性別適合手術をすれば公衆浴場にはいってよいが、性別適合手術をしなければ公衆浴場に入ってはいけないとするわけであるが、ここで問題になっているのはもはや安全というより、門番のような資格認定である。性別適合手術で何を想定しているのかは分からないがホルモンの状態や美容整形手術などのさまざまな状況があるなかで、性別適合手術のみが問題とされることの意味は何なのだろうか。性別適合手術の金額を調べたことがあるのだろうか。その健康にもたらす影響は、痛さはどうだろうか。そこに至るまでのプロセスはどうだろうか。
ちなみに、公衆浴場については、夜の空(よるのそら)が良い文章を書いているので、紹介しておきたい。
さて、公的機関がデマを否定しているのだから、否定する前のデマには一定の理由があったと主張しているわけだが、単に事実に則っていないデマでもデマが広がれば否定するだろうと思われる。
三つ目の理由は以下の通りである。さて、疲れてきた
3)「すべての国民が安心して」はヘイトか?
同声明では、LGBT理解増進法に修正の段階で「全ての国民が安心して生活できることとなるよう留意」の文言が加わったことを、マイノリティの権利保障のための法がマジョリティの権利尊重を謳うことになってしまったと厳しい批判がなされています。2月に同性婚について「見るのも嫌、隣に住んでいるのはもっと嫌」などと発言した首相秘書官が更迭されましたが、このような差別的な偏見を「国民の意見」として留意する、ということならばもちろん大問題ですが、増進法の文言は、そうではなく、女性という、数のうえでは多数ではあるが、性犯罪の被害や性差別にさらされ続けているマイノリティの立場にも配慮することを求めたものと解釈するのが妥当ではないでしょうか(偏見を擁護するような適用がなされないように監視していく必要があるのはもちろんですが)。同声明が、同法のこの部分を、性的マイノリティに嫌悪やヘイトをすることに免罪符を与えたものであるかのようにみなして非難するのは、女性の安全をあまりにおざなりにしてはいないでしょうか。
同性婚への差別的見解を批判することで、自分は差別的ではないですよというふりをするの、滑稽で笑ってきてしまうのですが、そもそもの解釈が、トランスへの権利侵害でシス女性の安全も損なわれる事例をもってきて、トランスの権利擁護によって女性の安全が損なわれると解釈しているから、解釈がずれるわけだ。さらにいえば「安心」と「安全」の差も大きい。
この「安心」の解釈はこのようにつかわれるならば、トランス排除的とみなさざるをえないが、あたかもトランス(や他の性的マイノリティ)の権利擁護が「全ての国民」(この文言自体が「国民」という差別的な言葉で彩られているわけだが)の「安心」で境界付けられているという発想自体が問題があると思う。ここは言語化できていないことは承知している。たとえば、「他の集団の権利擁護と合わせて」とかならば、まだましだったかもしれない。しかし、そもそもそのような文言をわざわざ入れることの問題点がある気もしている。やはり、最初のトランスへの権利侵害とトランスの権利擁護の捉え間違いによる作られた対立が問題なのだろう。
また、牟田和恵(むた・かずえ)は2023年7月12日の(エッセイ > 編集(当時)コメント付:トランスジェンダーを排除しているわけではない 石上卯乃 | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network)の更新を経て次のようなツイートを書いている。
https://twitter.com/peureka/status/1680046336778047488?s=20
これはとても悲しい。WANがトランスジェンダリズムに完全に舵を切ったこともだが、自らがサイトに掲載した記事を晒し上げ、何が差別なのかを明示することも無く差別と断定して拡散するとは。プラットフォームとして一線を越えてませんか?記事をただ下ろすのでは無責任という考えだとしても著者に失礼 https://t.co/ht7GMmGntC
— 牟田和恵 (@peureka) 2023年7月15日
「トランスジェンダリズム」という言葉はもはやトランス排除派ばかりが使うようになったが、要はトランス非排除派のことを指している。
ちなみに、WANはもともと石上(いしがみ)の記事を掲載するなどトランス排除派によりそっていたことで有名であり、2023年6月のLGBT理解増進法のバックラッシュあたりで、反トランス排除派の方向に変わっていった。
ちなみに、石上(いしがみ)の文章を読むには、この注意事項を読んでOKを押す必要があり、記録にもなっているだけでなく、注意事項もしっかり読ませるので、後処理としてはまずまずの対応だと判断している。さらにちなみに、これらのWANの動きには熱田敬子(あつた・けいこ)ひきいる、ふぇみぜみが動いているように見える。助かる。
今回の話題のツイート
さて、話を戻して、牟田(むた)の最初に紹介したツイートの解説に入ろう。まず、「高井 能川小宮」は、高井ゆと里(たかい・ゆと里)、能川元一(のうかわ・もとかず)、小宮友根(こみや・ともね)のことである。
高井(たかい)は『トランスジェンダー入門』を周司あきら(しゅうじ・あきら)と共に書き『トランスジェンダー問題』を翻訳した倫理学者である。あまりツイッターでトランス排除派と戦っているところは見たことはなく、むしろトランス非排除派にとってトランスを論じるときに一番重要なことはトランス排除派との闘いというよりも、健康や貧困の問題であることを繰り返し主張し、リプロダクティブ・ジャスティスなどについても発信を行っている人である。牟田(むた)をはじめとするトランス排除派との闘いはあまりしていないので、なぜここで高井(たかい)の名を牟田(むた)があげているかは判然とせず、最近より知名度があがったことがあるだろう。
能川元一(のうかわ・もとかず)は右翼の研究などで有名な人である。トランス排除派との闘いでもそれなりにツイッターで対応していた人でもある。
小宮友根(こみや・ともね)は社会学者であり、トランス排除派の運動が最初に盛り上がった時にツイッターでかなり闘いに尽力した人である。とくに千田有紀(せんだ・ゆき)というトランス排除派の社会学者に対してしっかりと反論した人でもある。
「札幌の事件」とは何か。札幌すすきの、首切断という形で注目を浴びた殺人事件であり、被害者が「女装した男性」であり、それを利用した性犯罪を行った恨みで殺されたのではないかと推測されている事件である。殺害した人の親も逮捕されたことで話題になっている。
以下に「女装」というキーワードがある記事で今後も残りそうなものを挙げておく。
https://news.livedoor.com/article/detail/24677799/
https://bunshun.jp/articles/-/64200
2023年7月27日現在ではこのような情報は公のニュースというより、上であげたような週刊誌的な情報源を中心に広がっていた。
このような事態をふまえて、多くの人がまだ何にも分からない状況で議論をふっかけるのかと批判し、多くの人がたとえ殺害された人がトランスだったとしてトランスの定義を退けていた人に何を聞きたいのかと批判され、他方でトランス排除派は「そうだ、そうだ、牟田(むた)はよくいった」という雰囲気である。また、いくつかトランス排除派からも「これはないでしょ」批判されていた。いくつかツイートを引用しよう。学者についてはアクセスしやすいように引用するが、学者以外は確認しなければアクセスできないように引用する。
次のツイートは情報が出ていないのに決めつけるな、という話。しかし、ここには情報の差が大きいとみられるので、微妙な反論だと思われる。核心はトランスだったとして、だからなんだと言うのだ、加害を起こすことはありえるという反論をするべきに思う。
お言葉ですが、性的指向およびジェンダーアイデンティティ(SOGI)は他者が指定するものではありません。亡くなった被害者の方が己はトランスジェンダーであるとはっきり表明していたわけでないのなら、それを第三者が勝手に決めつけることはできません。
— おきさやか(Sayaka OKI) (@okisayaka) 2023年7月26日
次のツイートは情報が出ていないのに決めつけるなとはっきり書いていてよい。
現段階では、この事件の詳細は何ら明らかになっていないですよ。容疑者が逮捕されたにすぎない。何も明らかになっていないところで、何かを議論したりするのはできないと思います。わからないのに、憶測で人々があれこれ言っていくのを悲しい思いでみています。 https://t.co/zEZZWIoTjL
— Aisa Kiyosue (@gorbeirani) 2023年7月26日
次のツイートは、たとえトランスが殺されていたとしても結び付け方がひどいという批判。
牟田和恵先生に名指しされてないですが、あれほどセンセーショナルな殺人事件で事件の外貌もはっきりしないまま、いきなりトランスジェンダーと結びつけること自体がヘイトを煽る行為です。自重してほしいものです。
— Mizuho.H (@_keroko) 2023年7月26日
言葉の使い方についての批判。
純粋に疑問なんですがそれのどこがアカデミックな疑問なんでしょうか。
— SHIMIZU Akiko(清水晶子)『フェミニズムってなんですか?』 (@akishmz) 2023年7月26日
トランスだとして、何を聞きたいのか系の批判
男性として生活しつつ女装もしていたなら、恐らく広義のトランスパーソン(トランスヴェスタイト)に当たる、男性でしょうね。 で、具体的な事件の被害者の分類が、アカデミックな観点からどのような意味を持つのでしょう? 一見すると、差別を煽る悪質なヘイト行為のように思えますが。
https://twitter.com/bonyouben/status/1684343222561304577?s=20
「純粋にアカデミックな疑問なんですが」という言葉をおちょくりながら批判しているツイート
純粋にアカデミックな疑問なんですが、個別の犯罪について属性を強調してセンセーショナルに社会に拡散することの意味を社会学者として分かった上で、このツイートをしているのですよね?
https://twitter.com/kazukazu881/status/1684211688961200130?s=20
有名なトランス排除派のツイート
引用の「アライ」は誰もこの疑問に答えず差別だ差別だと言うだけ。女の性暴力被害より女装男のお気持ちが何より大事だから。https://twitter.com/nekoballon/status/1684237400153763853?s=20
他には批判を「口をふさぐ」と形容しているトランス排除派のツイート。
ただアカデミックな疑問を口にしただけで、口を塞ごうとする人たちが沸いてて怖い。 トランスジェンダーが決めつけならトランスジェンダーではないというのも決めつけだろう。https://twitter.com/6Bb28ptot/status/1684349625480912896?s=20
これについては、そもそも前提としてトランスだから安心とはあまり人々は言っていないと思う。女性だから安心もいっていないように、トランスだから安心しろも言っていない。したがって、加害行為をしたひとがトランスであることは十分にありうる(ただし、今回の被害者が加害行為をしたかどうかは週刊誌情報レベルしかまだ手に入らない)。多くの批判はだから、「トランスジェンダーではない」といっているわけではない。
ちなみにトランスジェンダーではないという決めつけは確かに問題である。そのようなツイートがあった(https://twitter.com/loveamigos/status/1684219127798325248?s=20 )。トランスヴェスタイトもトランスの傘の中に包摂される。トランス女性とは言わないだろうが。
女性同士だから安全できるというのが、事実誤認で、女性同士での加害被害は起きている。そのうえでより安全にすることが重要なのに、性別やジェンダーモダリティで資格付ければ安全が確保できるという考え方が安全に貢献できていない。
加害を起こしたとされたもののマイノリティ属性が原因と考えられるのはよくある差別的な推論の仕方である。しかも、今回の事件ではまだ殺害された人が加害をしたのかどうかもより広く読まれているニュースでは明らかになっていない。殺害の動機もまだ不明。そのような状況で憶測で語ることはやはり問題だろう。
つかれた。もう一つ書くことがあるので、続ける。
AAA(とりぷるえー)の與(あたえ)のカミングアウト
このリンクがずっと残ってくれればいいが。
◆僕自身、長い間この不安と闘ってきました
これから僕が話すことは皆さんが期待して望んでる内容ではないかもしれません。中には理解するのに時間がかかる方もいると思います。でも、これから僕が話すことがきっかけで少しでもこのことについて理解が深まり、世界が変わってくれることを願っています。今日、たくさんのファンの皆さんがここに参加することを希望していたのに、席に限りがあり、来られなかった方もたくさん出てしまったとスタッフさんから聞きました。これから話すことをSNSやプレスリリースを通して発表するという選択肢も正直ありました。でも、今日はどうしても皆さんの顔を見ながら、直接伝えるべきだと思い、このような形を取らせてもらいました。僕自身、長い間この不安と闘ってきました。本当に何年もの間、自分の一部を受け入れることができませんでした。それでも、さまざまな葛藤を乗り越え、今やっと皆さんにこのことを、打ち明ける決意ができました。それは、僕がゲイであるということです。みんなたぶん、すごく驚いていると思うし、でも最後まで聞いてください。カミングアウトを決意するまでに、すごく時間がかかりました。自分ですら自分のセクシュアリティーを受け入れることができませんでした。もし自分がゲイだということを認めてしまったら、今度は世の中が自分のことをアーティストとして認めてくれないのではないかという恐怖を感じることもありました。でも、悩みに悩んだ結果、ファンの皆さんをはじめ、僕が大切にしている全ての人たち、そして僕自身のためにも本当のことを受け入れ、それをしっかりと皆さんに伝えることが僕なりの誠意だと思いました。そして、僕と同じ境遇に置かれている方々にも、勇気を持つきっかけにしてもらいたかった。自分は一人ではないということを、わかってほしかったんです。カミングアウトを決意する前は二つの道だけしかないと思っていました。一つ目は、本来の自分を受け入れることなく、エンターテインメントの世界に居続けること。もう一つは、エンターテインメントの世界から退いて、世間から隠れてひっそりと暮らすことでした。でも、たくさんたくさん考えて、三つ目の選択肢にたどり着きました。それはゲイということを公表した上で、エンターテインメントの活動を続けるということです。ありのままの自分で生きていくことで、大好きなエンターテインメントの活動をあきらめたくなかったんです。僕はこれを機に、まったく違う人間になってしまうわけではありません。むしろ、このことを打ち明けたことによって、本来の自分を分かってもらえる、ファンの皆さんとの距離が縮まることを本当に願っています。自分がゲイであるということを明確に理解するまでには時間がかかりましたが、今振り返れば、昔からその認識はあったような気がします。僕が子どものころ、テレビではLGBTQ+のことをおもしろおかしく扱っている時代でした。もちろん、そのころは今みたいにインターネットが普及していなかったので、自分のセクシュアリティーについて疑問を持ったとしても、そのことについて知る機会がほとんどありませんでした。だから、そのころは「自分が間違ってるんだ」「自分はおかしいんだ」と思っていました。誰かにこのことを相談することもなく、自分の感情を押し殺していました。そんな中、14歳でエンターテインメントの世界に入り、毎日仕事が忙しく、気づいたら自分の疑問や悩みが多忙な日々に紛れていました。そのころから、本当にたくさんの方々に支えてもらってはいましたが、それでもどこかで自分は独りぼっちのような感覚でした。そんな生き方をしてるうちに、このままではメンタルにも影響が出てくると思い、あるとき海外に移住することを考え始めるようになりました。海外に行き始めたころの話ですが、ある日、男性同士が街中でキスをしてるのを見て、僕は衝撃を受けました。周りの人たちで、彼らの行動を気にしている人は誰もいませんでした。そのとき初めて自分は一人じゃないんだって、どこかほっとしました。LGBTQ+の人でも堂々と幸せになる道はあるんだと希望がわいてきました。完全に自分のセクシュアリティーを受け入れるにはそこからさらに時間がかかりましたが、LGBTQ+であろうと、どんな人間でも、幸せに自分らしく生きる権利があるんだということに気づかされました。だから僕も自分らしく生きていこうと、このできごとがきっかけで自分と向き合っていくようになりました。LGBTQ+の僕たちも同じ人間です。他の人と違う扱いをされたくありません。僕でさえ、このことを受け入れるまでに時間がかかりました。それと同じように皆さんにとっても時間がかかることだと思います。日本では、あまりオープンにLGBTQ+について話し合うことも少ないと思うので、さらに難しいことなのも分かっています。僕自身も今日カミングアウトをしたばかりなので、これからもLGBTQ+について学ぶことがたくさんあると思っています。さまざまな固定概念によって一人で抱え込み、悩んでいるLGBTQ+の方たちが世界中にいます。ハラスメント、いじめ、世間的なプレッシャーに苦しみ、それによって精神的ダメージを受ける人も決して少なくありません。僕がとある記事を読んで得た情報なのですが、LGBTQ+と自認している方のうち、48%が自殺について考えたことがあり、さらにそのうちの12%は実際にそれを行動に移していたという統計を目にしました。例えば、自分の性の対象が同性やどちらの性にも向いているというだけで、命を絶つ必要があるのでしょうか。理解されずに自分のことを責め続けて、最終的に耐えられずに追い込まれてしまう方がこれだけ多く存在するということを、一人でも多くの方に知ってもらいたいです。今日僕がこの発表をしたことに驚いている方もいると思います。受け止めるのも難しいと思う方もいるでしょうし、受け止めるのに時間がかかることも理解しています。今、たくさんの情報を一度に発信してるので、それも当然のことだと思います。母にカミングアウトしたとき、幸い、母はすぐに僕のことを受け入れてくれました。しかし、公にカミングアウトしたいと話したときに、母は僕がひどいバッシングを受けるのではないかと心配し、反対されました。でも、時間がたつにつれ、母もLGBTQ+の課題について一緒に考えてくれるようになり、僕が公にカミングアウトすることも賛成してくれました。僕のウェブサイトを見ていただくと、LGBTQ+に関するリンクがいくつか張ってあります。これを機に、知らないところで苦しんでいて、助けを必要としている人たちがいるということを、多くの方に知ってもらいたいと思いました。LGBTQ+の方たちの多くは、セクシュアリティーを理由にいじめられたり、平等でない扱いを受けています。でも希望はあると思いますし、世界は変わってきていると思います。何事も、ネガティブなことでも、みんなで力を合わせれば、ポジティブなことに変えていけると思います。もしこの会場の中にも自分のセクシュアリティーで悩んでいる方がいたら、僕のホームページをぜひご覧ください。あなたは絶対に一人じゃない。僕もあなたのことを全力で応援します。同じ悩みを抱えていた一人の人間として、LGBTQ+の方々には胸を張って、堂々と生きていってほしい。ただ、カミングアウトをするかしないかは個人の選択の自由です。もしも、カミングアウトをしたいと思っているならば、僕もそうしましたが、周りにサポートしてくれる方を見つけてからの方が心強いと思います。今は誰もいないと思っていても、支えてくれる方は必ずいます。僕も、今となっては周りに応援してくれる人がたくさんいますが、それも長い時間をかけて築き上げてきたものです。僕もそれを踏まえた上で、今日、ここでカミングアウトをしています。どんなセクシュアリティーだとしても、ゆっくり時間をかけて、まずは自分を大切にしてあげてください。自分を愛することが一番です。そしてもう一つわかっていただきたいのが、ゲイだからといって、これまでの自分が変わってしまうわけではありません。僕は今の自分のままで十分幸せです。これからも変わらず、與真司郎として生きていきます。そして最近、僕はアーティスト活動を再開することについて考えるようになりました。AAAが活動休止になって、自分はソロアーティストとして活動を続けていく意味はあるのかと悩んだ時期もありました。自分はアーティストとしてどんなメッセージを発信していけばいいのかが、わからなくなってしまったからです。でも、LGBTQ+の課題にかかわらず、悩んでいる人を一人でも多く救いたいという気持ちがありました。そして、ありのままの自分を打ち明けようと決意したことによって、発信したいメッセージが明確になりました。本来の自分を表現しながら、聞いてくれる人を幸せにするということが、僕のアーティストとしての一番の目標です。そこで、一つ発表があります。アーティスト活動を続けていこうと決意したことによって、今回、新曲をレコーディングしました。タイトルは「Into The Light」です。日本語では「新たな光の指す方へ」という意味です。世界中にこの曲が届いたらいいなという思いを込めて、歌詞は全て英語になっていますが、日本語訳も考えました。後ほどここに来てくれた皆さんにいち早く、聴いていただきたいと思っています。そして、この曲の売り上げの一部を日本のLGBTQ+の支援団体に寄付します。「Into The Light」を通して、僕の経験だけではなく、僕と同じ境遇に置かれている方についても、理解を深めるきっかけになってくれればうれしいです。そしてLGBTQ+の方々に限らず、皆さん一人一人の経験と重ね合わせて、聴いていただきたいと思っています。音楽は世界共通です。つらいトラウマ(心的外傷)を乗り越えた経験や、今、実際、人生で葛藤してる方々など、たくさんいると思いますが、僕がメンタルヘルスについて発信することで、世界のどこかで勇気づけられる人がいてくれたらいいなと、心の底から思っています。人生いいときもあれば、うまくいかないときもあります。それでも諦めずに進み続ければ、新たな光の指す方へと導かれていくと思います。僕も正直この先どうなるのか、自分でもわかりません。でも、一度きりの人生、後悔したくないんです。世界がもっと明るくなり、どんな人でも生きやすい場所になってくれることを願っています。そして最後にもう一つ、大きな発表があります。実は今、ハリウッドで僕の人生についてのドキュメンタリーが制作されているところです。プロデューサーは、(映画の)「グリーンブック」や「メリーに首ったけ」で知られるPeter Farrelly(ピーター・ファレリー)と、(Netflixのドキュメンタリーの)「タイガーキング」で知られるFisher Stevens(フィッシャー・スティーブンス)です。2人ともアカデミー賞などを受賞してる偉大な方々です。彼らをはじめとしたハリウッドで活躍している方たちが、僕の人生経験や、これからやりたいと思っていることに共感してくれました。この機会に、感謝するとともに自分ができることを精いっぱい取り組みたいと思います。本日は本当にありがとうございました。
悲しいことは、「メンバーはタイプではない」と偏見への防御をせざるを得なかったこと。あたえさんが、そのように言わざるを得なかった状況が一刻もはやくなくなりますように。
ちなみにこんなブログもあった。
泣けますね。
以上。
(S)